さとう先生知的障害のあるお子さんの場合、身体的な特徴や行動の特性(手洗いの徹底が難しい、口に物を入れやすい、症状をうまく伝えられないなど)により、周囲がより細やかに配慮する必要があります。
乳幼児期から学齢期にかけて特にかかりやすい感染症と、その対策・対応についてまとめました。
お子さんが集団生活(保育園、学校、放課後等デイサービスなど)を送る中で遭遇しやすいものです。
| 年代 | かかりやすい感染症 | 特徴・注意点 |
| 乳幼児期 | RSウイルス、手足口病、ヘルパンギーナ、胃腸炎(ロタ等) | おもちゃの共有や指しゃぶり、おむつ交換を通じた接触感染が多い時期です。 |
| 学齢期(小学生・中学生) | インフルエンザ、新型コロナ、溶連菌、マイコプラズマ肺炎 | 学校や放課後デイでの飛沫感染が中心。流行時期には急激に広がります。 |
❶RSウイルス感染症
特徴: 1歳までに半数以上、2歳までにほぼ全員が感染すると言われるウイルスです。
症状: 鼻水、咳、発熱など風邪のような症状から始まります。重症化すると「ゼーゼー、ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難が起こり、細気管支炎や肺炎になることがあります。
対処法: 特効薬はないため、対症療法が中心です。
・鼻吸い: 鼻詰まりで呼吸が苦しくなるため、こまめに吸引してあげましょう。
・加湿: 喉の乾燥を防ぎます。
受診の目安: 呼吸が速い、胸がペコペコ凹むような呼吸(陥没呼吸)をしている場合は早急に受診してください。
❷手足口病
特徴: 主に夏場に流行するウイルス性の感染症です。
症状: 口の粘膜、手のひら、足の裏などに2〜3mmの水疱性の発疹が出ます。発熱は3割程度で、あまり高くならないことが多いですが、口の中の痛みで食欲が落ちるのが特徴です。
対処法: * 食事の工夫: 口内炎がしみるため、熱いもの、酸味の強いもの、塩分の強いものは避けます。ゼリー、プリン、冷めたおじやなど、喉越しの良いものを与えてください。
水分補給: 脱水を防ぐため、少しずつこまめに水分を摂らせます。
❸ヘルパンギーナ
特徴: 手足口病と同じく夏風邪の代表格で、急な高熱が出るのが特徴です。
症状: 38〜40度の高熱が突然出ます。喉の奥(軟口蓋など)に小さな水疱や潰瘍ができ、強い痛みが生じます。
対処法:
・解熱剤の活用: 高熱でぐったりしている場合は、医師から処方された解熱剤を使用して体力を温存させます。
・喉への刺激を避ける: 手足口病と同様、食事は「冷たくて柔らかいもの」が基本です。
❹感染性胃腸炎(ロタ・ノロ等)
特徴: 冬から春にかけて多く、非常に感染力が強いのが特徴です。
症状: 激しい嘔吐、下痢、腹痛、発熱。ロタウイルスの場合は、米のとぎ汁のような「白い下痢便」が出ることがあります。
対処法:
・脱水予防: 吐き気が落ち着いたら、経口補水液(OS-1等)をスプーン1杯から少しずつ与えます。一気に飲むと再び吐いてしまうため、「少量頻回」が鉄則です。
・二次感染防止: 吐瀉物や便の処理は、使い捨て手袋やマスクを着用し、次亜塩素酸ナトリウム(ハイター等)で消毒してください。アルコール消毒は効きにくい場合があります。
❶インフルエンザ
特徴: 1〜3日の潜伏期間を経て、急激に発症します。A型・B型があり、毎年のように流行します。
症状: 38度以上の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身の倦怠感が強く出ます。その後、咳や鼻水が続きます。
対処法: 早期受診: 発症から48時間以内であれば抗インフルエンザ薬(タミフル、ゾフルーザ等)が効果的です。
・異常行動の監視: まれに高熱による熱性けいれんや、幻覚・異常行動が見られることがあるため、発熱から2日間は保護者が目を離さないようにしてください。
❷ 新型コロナウイルス(COVID-19)
特徴: 変異を繰り返しており、現在は喉の痛みや鼻水など、風邪に近い症状が多く見られますが、感染力は依然として強いです。
症状: 発熱、喉の強い痛み、咳、鼻水。乳幼児では嘔吐や下痢などの消化器症状が出ることもあります。
対処法:
・対症療法: 基本的には解熱剤などで熱を下げ、安静にします。
・隔離と換気: 家庭内感染を防ぐため、可能な範囲で部屋を分け、こまめに換気を行いましょう。
❸溶連菌(ようれんきん)感染症
特徴: 正式名称は「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」。細菌感染のため、抗菌薬による治療が必須です。
症状: 喉の激しい痛み、高熱。舌がブツブツと赤くなる「イチゴ舌」や、体に細かい発疹が出ることがあります。
対処法:
・薬を飲み切る: 抗菌薬を飲み始めると24時間ほどで熱が下がりますが、自己判断で中断すると、腎炎やリウマチ熱などの合併症を起こすリスクがあります。必ず医師の指示通り最後まで飲み切ってください。
・食器の共有を避ける: 飛沫や接触で感染するため、タオルの共有などは控えましょう。
❹マイコプラズマ肺炎
特徴: 「しつこい咳」が特徴で、5歳以上の学童期以降に多いですが、乳幼児でも感染します。
症状: 最初は発熱、頭痛、倦怠感から始まりますが、少し遅れて乾いたコンコンという激しい咳が出始め、数週間にわたって長引くのが特徴です。
対処法:
・適切な抗菌薬: 通常の風邪薬や一般的な抗菌薬(ペニシリン系など)が効きにくいため、マイコプラズマに有効なマクロライド系などの抗菌薬を処方してもらう必要があります。
・加湿と水分: 咳で体力が消耗しやすいため、部屋を潤し、こまめに水分を摂らせて喉を保護しましょう。
一般的な予防に加え、障害特性に合わせた工夫が重要です。
① 視覚支援を用いた手洗いの習慣化
工夫: 「水で濡らす→石鹸→ゴシゴシ→流す」という工程を写真やイラストの手順表にして洗面所に貼ります。
代替案: 手洗いを嫌がる場合は、除菌シートや、好きな香りのハンドソープ、泡が出るスタンプなどを活用して「楽しい時間」にします。
② マスク着用の無理強いを避ける
感覚過敏でマスクが難しい子も多いです。「外では必ず」と厳しくするよりは、「人混みだけ」「短時間だけ」とスモールステップで進めるか、周囲が徹底して防備する考え方に切り替えます。
③ おもちゃ・共用物の除菌
口に入れてしまう特性がある場合は、洗浄しやすいプラスチック製のおもちゃを選び、こまめに除菌します。
④ 予防接種のスケジュール管理
知的障害がある場合、通院や注射自体がパニックの原因になることがあります。主治医と相談し、体調が良い時期に優先順位(インフルエンザなど)をつけて計画的に接種します。
言葉で体調不良を訴えられない場合、「行動の変化」がサインになります。
【初期対応:いつもと違うサインに気づく】
食欲がない、眠気が強い、逆にパニックや自傷が増える、顔色が悪い、目が虚ろなど、「いつもと違う」と感じたらすぐに検温します。
【受診時の配慮】
事前連絡: 病院へ行く前に「知的障害があり、待ち時間が難しい」「暴れてしまう可能性がある」ことを伝えると、車内待機や別室対応を案内してもらえる場合があります。
症状メモ: 痛みや違和感を本人が説明できないため、「いつから、何度の熱があり、どんな様子か」を保護者が時系列でメモして医師に渡します。
【家庭での療養】
水分補給の工夫: 経口補水液やゼリーなど、本人が好む形でこまめに水分を摂らせます。
隔離の工夫: 本人が自室に留まるのが難しい場合、無理な隔離はストレスを増幅させます。無理に閉じ込めず、換気を徹底し、介助者がマスクと手袋を着用して対応する「家庭内ゾーニング」を意識します。
服薬: 錠剤が飲めない場合は、服薬補助ゼリーや、好きな食べ物(アイスやヨーグルト)に混ぜても良いか薬剤師に確認しておきましょう。
群馬県内にお住まいとのことですので、お子さんの体調急変時や、家庭内での介護が限界に近い場合は、以下の窓口へ早めに相談することをお勧めします。
- かかりつけの小児科・相談支援専門員: 療養中のサポートについて相談できます。
- 群馬県こども救急電話相談(#8000): 夜間に受診すべきか迷った際の指針になります。
現在、重度の息子さんの介護や、娘さんの進学準備で非常にお忙しい時期かと思います。ご自身の体調も優先しながら、無理のない範囲で対策を取り入れてみてください